私は24歳の時にサービス業から転職し水産加工業に入りました。サービス業はカタログで商品の詳細を把握してメーカーに発注し、少しでも多く商品を売り利益を稼ぐ商売でした。水産加工では自社でオリジナルの商品を作りますが、如何に付加価値とお客様から求められる製品を開発し、販売することが難しいかを思い知らされたことを今でも覚えています。
最初に配属された営業職で、商品を販売する立場の私の最初の大きな難題は商品知識の無さでした。自分なりに30年前を振り返り、思い出すのは「答えは現場すなわち工場にある」ということです。工場で造るあらゆる原料の目利き、生産ライン、工場で働く人の大変さと日々勉強の毎日を思い出すと共に今でも私の基本はそこに有ります。
それから年月を重ね、私の周りにいた厳しい御言葉を頂けた諸先輩方やお取引様の方々のご協力があり35歳の時に主にタラコを中心とする水産加工会社、株式会社スイコウを平成13年3月2日に設立いたしました。設立当時は市場(荷受け)やテレビショッピング等を中心に販売しておりましたが時代の変化と共にお客様の要望もあり、平成19年5月に直売店魚卵人をオープンし、お客様に良い商品を適正価格で販売することを心がけています。
又、平成28年1月に本社工場から4kmの場所に海水量70tの活魚センターを開設し、松川鰈、平目、ボタン海老、つぶ貝、ホッキ貝、白貝、蛸、ナメタ鰈、赤鰈、近畿、タラバ蟹、毛蟹、ホタテ、マゾイ、クロゾイなど季節より多種多様の活魚を扱っております。その中でも特に松川鰈(王鰈と呼ばれている)の扱いでは札幌市場や豊洲市場でも高い評価を受けています。
活魚センターでのこだわりは一年中海水温を5度以下に保ち、水槽の海水が何時も海と同じ様な状態で魚にストレスがかからない様、清掃等を徹底し水質管理を心掛けています。当社の活魚センターでは、仕入れた活魚を水槽で活かしている感覚ではなく、漁獲された時に捕まりたくない一心で必死に抵抗し、漁獲後は疲れ切っている魚たちを休ませて酸欠気味や筋肉疲労を自然界の海にいた状態に回復させてから出荷しています。魚は水温が高いと酸素量が下がるため活性化し泳ぎます。又海水が汚れていると人間と同じで病気にかかり弱ったり死んだりします。先程のこだわりの理由は水温を低く保つことで魚は動きません。海水をきれいな状態にして置くと魚の回復力は早まると同時に魚が死に辛く、良い状態を保ち長期間に渡って安定供給が可能になります。
だからと言って全ての魚を完璧に管理することが出来ているのかと言われると答えはそうでは有りませんので、日々努力と研究を重ねて勉強しております。その中で、平成30年1月活魚センターに国による水産庁の物作り補助金を頂き、主に平目や松川鰈の処理をする為の衛生管理室と3Dフリーザー(急速冷凍機)を導入しました。導入目的は大きく2点です。自然の摂理で魚は漁獲量が少ないと魚価は上がり、大量に獲れると魚価は下がります。又、国の法律が変わり刺身用の魚に寄生するアニサキスが生息した場合は提供した販売者の責任で食中毒扱いになりました。当社は、魚価の安定を保つと同時に量販店様のアニサキス対策、活魚や鮮魚も開始しております。又、3Dフリーザーは、優れた急速冷凍機で当社の水槽で管理した活魚を活〆し、神経〆し、処理すると、ほぼ生に近く仕上がります。こちらは一例ですが、今後とも努力と研究は惜しまず進めてまいります。
最後になりますが、地球温暖化等により、北海道での漁獲魚が激変しています。従来生息していた魚が激減し、今まで採れなかった魚が漁獲されています。今後の水産加工会社は、今漁獲されている魚を加工して、お客様が認めて戴く商品を作ることと考えております。
当社の扱う商品は安心安全はもとより今後とも、今より高い目標を持って地に足を着けた経営をして参ります。